あらの(一人)麻雀研究所

麻雀王2

麻雀王〈2〉最強の押し引き法則

 

概要

この本は「押し引き」をテーマにした麻雀コラム集です。

サブタイトルに「最強の押し引き法則」とあるように、作者としては法則を書こうとしているらしいのですが、残念ながらそこまでのものにはなっていません。せいぜいテーマを押し引きに絞った麻雀コラム集と言ったところです。

論理が飛躍しているところや説明が不足しているところが多いのですが、幸いにもウソはあまり書かれていません。盲目的にこの本の主張を信じるのはやめた方がいいですが、もし信じてしまってもそれほど悪影響はないと思われます。

押し引きに関して、なんでもいいから指針が欲しいというような人にはおすすめします。

ちなみに、麻雀王の続編という位置づけになっていますが、内容的には特に関係ありません。

 

感想

この本では、麻雀における押し引きについて論じています。構成としては、四人分の捨て牌と自分の手牌が示された例題があり、その後に解説が続くという形になっています。ところどころ関係のない話も含まれていますが、読み飛ばせば問題はありません。

 

この本を読んで一番気になったところは、主張の根拠となっている考え方の説明がほとんどないという点です。

例えば、13-14巡目に聴牌した場合には、5,200点ならリーチが正解、マンガンならダマが正解、とかいうような主張がいくつか出てきます。こういう主張について、その理由の説明がほとんどないのです。

いったい何をどう考えてそういう主張をしているのかが分からなければ、読んでいる方としては困ってしまいます。ただ適当に言っているだけなのか、それとも何かしらの根拠を持った主張なのかすら判断できません。

他にも、〜という事が分かっています、とか、〜と言われています、とかいう表現がありますが、同様に説明は与えられていません。麻雀の理論的な話をするのに、理論のもとになっている考え方の説明がなければ、それは単に自分の意見の押し売りになってしまいます。もし麻雀王3を出版することがあれば、この辺には留意してもらいたいものです。

麻雀の8割は押し引きで決まる、とか言われても理解出来ませんので…

 

本書の後半部分では、点数状況をもとにした押し引きの話をしています。各自の持ち点がこういう感じのときには押すべきだ、とか、引くべきだ、とかそういう話です。

ただ、ルールに関する説明がまったくありません。基本的にはウマとオカを考慮に入れた期待値を最大化すればいい話だと思うのですが、そのウマ・オカがどうなっているのか示されていないのです。

例題の点数状況から、25,000点持ちを想定しているらしいということは分かったのですが、ウマについては触れられていません。これによって戦略は結構変わると思うのですが…

 

さて、この本では麻雀の押し引きに関する法則というものを提案しているわけですが、その大部分は特に目新しいものではないか、本質とは関係のないものです。例えばこんな感じ。

  • リー棒2本を拾いたい!
  • 相手がカモなら負けも勝ち!
  • 嫌な相手には打つ前から負ける!
  • リアルの親は麻雀の親より強い!

これが押し引きの法則ですか?と突っ込みたくなりますが、それはおいておくとして、私が今まで聞いたことがなかった主張が、

  • 流れというのはペシミズム(悲観主義)なのです。

というものでした。あまり賛成は出来ない主張なのですが、目新しいという意味で興味はわきます。ただ前述のように、これについてもあまり上手く説明できておらず、著者が何を言いたいのかが理解出来ませんでした。せっかく新しい主張をするのであれば、読んだ人が趣旨を理解出来るように書いてもらいたいものです。

 

それから、一番がくっと来たのは後書きにあるこの文章です。

  • だいたい、矛盾のない理論なんて単純すぎて価値がないのです。

これにはさすがに賛同出来ません。

理論というのは矛盾なく組み立てられるべきものであって、矛盾が生じているのであれば、それは理論的に破綻しているということです。単純であるとか価値があるとか以前の問題です。もしも自分の主張に矛盾があると思うのであれば、それを理論とか法則とか呼んではいけません。

この一文を本の後書きで読まされたときには結構ショックがありました。もしも作者が本当にこう思っているのなら、せめて前書きに書いておくのが親切というものです。

そうすれば無駄な時間を使わずにすみますので…

 

最後に、本書のイラストは片山まさゆき氏のものなのですが、麻雀王からの使い回しが多くて残念でした。本文はともかく、ここは手を抜かないで欲しかったなと思います。

 

著者

監修:近代麻雀編集部

その他の著書

イラスト:片山まさゆき氏

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